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【地域のこと/観光協会】邪魔の妖気を浄化する「矢」。スポーツ用品として伝統工芸品として、現代につながる矢作りとは。@相良矢工房 / Yame Rediscovery 25

10月 31st, 2018

【地域のこと/観光協会】邪魔の妖気を浄化する「矢」。スポーツ用品として伝統工芸品として、現代につながる矢作りとは。@相良矢工房 / Yame Rediscovery

¥先日、福岡市大濠公園のそばにある護国神社を散歩していると、弓矢をたずさえた年配の方々の袴姿をみかけました。「私ももう少し歳をとったら弓道はじめてみようかな」と、一緒にいた母がひとこと。
日本古来の武術としてその作法を受け継ぐ弓道、最近では現代社会の生活にあった生涯スポーツとして適していると、老若男女問わず多くの人々に楽しまれているのです。

今回はその弓道で用いられる「矢」をつくっている「相良矢工房」さんを訪れてきました。

武器として、呪術の道具として、縁起物として。矢は邪魔の妖気を浄化する。

「矢」と聞いて思い浮かべるイメージといえば、まっすぐな細い棒に数枚の羽と尖った矢尻がついているあのシュッとした形。弓矢の起源はさかのぼると狩猟採集社会真っ只中の中石器時代にあるといわれています。その頃から基本的な形自体は変わっておらず、非常に原始的な構造といえます。
用途のほうを考えてみると、武器として使うことはさすがにもうないですが、飛び道具としての機能は弓道に受け継がれています。また、呪術的な意味合いをもつものとして奈良時代に祭儀で用いられるようになって以降、現代でも縁起物として神社やお寺で授与されていたり、流鏑馬をはじめとして神事で使用されます。

「矢」の形と用途、どちらも今も昔と変わらず脈々と継承されてきたもの。そう考えるとなんだか感慨深いです。

神社やお寺で授与される縁起物とされている羽のついた矢は「破魔矢(はまや)」といいます。お正月に初詣に行くと、この破魔矢を手にした人を見かけることもしばしば。
日本では古くから、その年の作物の豊凶を占う際に弓を引いて矢で的を射る行事があり、時が経つにつれ矢単体だけが縁起物として飾られるように。破魔矢の先端が尖っていないのですが、これは元々邪心や邪気といった「邪魔」の妖気をうち破って浄化することを目的としていて、ものにダメージを与える必要がなかったからです。
別の種類に「鏑矢(かぶらや)」といわれる先端に卵型の浮きのようなものがついた矢があります。この卵型の浮きのような「鏑(かぶら)」は中が空洞になっており、「目」と呼ばれる窓が空いているのが特徴。矢を射たときにこの目を風が通り抜け、甲高い「ポーッ」というような音が鳴るしくみ。本来は戦の合図で使用されていたこの音は、邪魔の妖を浄化するとされ神事で用いられてきました。

「下鴨神社 節分祭 追儺式・弓神事の鏑矢」 0:51からの矢を放つ音が鏑矢特有のもの。

本町通りの古民家に店をかまえる相良矢工房。

伝統工芸でもあり、スポーツ用品でもある。多様なニーズに対応する相良矢工房。

八女市本町の古民家に店と工房を構える「相良矢工房」ではここに紹介した様々な種類の矢がつくられています。創業宝暦8年の工房を継ぐ、相良弘さん(58歳)にお話を伺いました。今から35-6年ほど前、親の後継ぎとして矢をつくり始めた相良さん。現在は職人さんと2人体制で工房にて、弓道の矢や破魔矢・鏑矢、その他にも創作料理や華道に使用する装飾品の矢などを制作されています。

矢は棒の部分である「篦(の)」、矢尻「鏃(やじり)」、篦に取り付けられている羽部分「矢羽(やばね)」、矢の末端で弦につがえる「筈(はず)」の4つの部位からできています。
昔、篦は篠竹、鏃・筈は鉄、そして矢羽には鷲や鷹といった猛禽類の羽や白鳥や七面鳥の羽を用いることが一般的で、特に猛禽類の羽は高級で、献上品としても用いられてきました。現在では篠竹はジュラルミンに、筈はプラスチックにと、矢羽に使用する鷲や鷹の羽も保護制度により使用が限られているため七面鳥の羽を用いるなど、より実用的かつ入手しやすく安価な素材でも作られるようになりました。

弓道部の学生や選手にとっては必需品でもあり、消耗品でもある矢。最近では、大手スポーツ用品メーカーでも製造されているのだそうですが、手作りの矢を求める人も少なくありません。また現在でも各地の神社等の神事で使われる矢や、節句のお祝いの時に飾る矢など、伝統工芸品としてのニーズもあります。

相良さんはそうした多様なニーズに対応するべく、材料も篠竹からジュラルミンまで、幅広く揃えて制作を続けています。

こうして素材が変化している理由の1つに矢を作る工程も関わってきます。例えば篦として用いる篠竹。飛び道具ですから空気抵抗を極限に少なくするため篦はまっすぐでなければなりません。天然素材を使用する場合、こうした火で炙って伸ばして固定するという加工技術の熟練度が試されるため、長年の経験が必要なのです。

手に持っている方が加工後の矢竹、節の有無が全く違います。ちなみにプラスチックの筈が付いているものがジュラルミン製。

実は八女で本格的に矢師を始める前に10年ほどインドネシアのジャワ島とバリ島に住んでいたという相良さん。ジャワ島では矢羽に使用するために七面鳥を飼育したり、バリ島では不動産業をされていたそう。(多彩な経歴に私たち、驚きました。)現在工房はゲストハウスとして増築中で、近い将来海外から人を呼んで滞在してもらいながら、矢の技術を伝授していくのが相良さんの目標だとか。

形や用途こそ変わらない矢、日本の文脈を継承しつつ海外に展開していくことで新たな目線・価値を持った伝統文化として広めていく中心地はここ、八女本町通りになるかもしれません。

参考
「弓神事の民俗的機能ー名張市・天理市の宮座行事を中心にー」波部綾乃
「破魔矢(はまや)とは?2019年の飾り方、処分の仕方と時期」https://jpnculture.net/hamaya/
福岡市弓道連盟 www.sports-fukuokacity.or.jp/about/group/01-kyudo
Wikipedia 「矢」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%A2#%E7%A5%9E%E4%BA%8B
Wikipedia「鏑矢」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8F%91%E7%9F%A2


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