【研究まにまに】「久留米絣デザインの二〇〇年」展ができるまで(2)下川富彌コレクション

30-40年前の久留米絣登場。

この展示の準備に当たって、相談させていただいたのが下川織物さんです。下川さんには、うなぎの寝床オリジナルもんぺ生地の多く(無地や十字)を織っていただいています。現在の代表の強臓さんが3代目。先代の富彌さんもまだ現役で工場に出られています。

それは下川さんの工場に伺って「絣之泉」をお見せし、似たデザインの生地を仕入れさせていただきたいというお話をした数日後。いただいたメールに書かれていたのは「父の時の生地が蔵にありましたが、興味ありますか?」ということでした。

先代のものということは、30-40年前に織った生地ということです。そんな貴重なもの、なにはさておき拝見しますとお返事し、早速お邪魔しました。

そこにあったのは箱いっぱいの生地見本。

p_20160907_133620 蔵にまだあって、取りやすいのだけ出してきたと言われましたが、それでもてんこ盛りです。ひとつひとつ出しながら、下川さんからそれらの背景を伺いました。「琉球調」が流行した時代があって、その時は「つばめ」や「雲」など、琉球絣の柄をたくさん織ったこと。手織りの柄を、機械織りに落とし込む時になされた工夫。細部にものすごく手をかけて、いろいろ実験した時代があったこと。織元ごとに、特定の柄をたくさん織った時期があり、下川織物は麻の葉柄を多く手がけたこと。染色方法の変化。などなど。

ものと、そのものについて語ってくれる人の両方が存在するというのは非常に幸せなことだと思います。昔のものの場合、常にその両方が揃うというわけではありません。それは「歴史をする」ということそのもの。その人達がしてきたこと、生きてきたこと、それがものを通して自分にも流れ込んでくる、その瞬間に、実際には自分が存在していなかった過去と自分がつながったような感覚になる。それは、自分の前にもあとにも、膨大な世界が広がっているということを感じさせてくれる瞬間です。

これらの生地には、戦後に久留米絣産業を担ってきた方々の「手」を感じることができます。

下川さんのご好意で、今回の展示にこの貴重な生地をいくらかお借りすることができました。「下川富彌コレクション」として、解説をつけて展示しています。ぜひ、多くの方々にご覧いただければと思います。岡本

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「久留米絣デザインの二〇〇年」
D&DEPARTMENT FUKUOKA
2016年09月29日(木) – 2016年11月15日(火)
11:00〜20:00(水曜定休)
http://www.d-department.com/jp/archives/sights/35715

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