【本を読む】宮本常一著作集 18 旅と観光

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約40年前の著作が現代のヒントになる。
日本における「旅」「観光」の教科書。

僕は、福岡県八女福島という日本全体で見たら「地方」と呼ばれる地域でお店をはじめました。ただの小売店ではなく、地域という観点でると、どうしても観光という視点を意識せざるを得ません。しかし「観光」と一口で言っても、よくわからなくなっているので、先人は「観光」に対してどういう視点を持って取り組んでいるのだろう?と疑問が沸き、この本を読んでみました。結果、約40年前の本にも関わらず、様々なヒントがちりばめられていました。その中でもグッときた部分を引用して紹介したいと思います。

観光資源というものは、もしこれに手を加えない場合には、観光対象にならないものであるということを、まず御記憶いただきたいと思うのであります。それではこの九州は観光資源という点について、どういうところであるかというと、おそらく日本で一番観光資源の豊富な地方であるけれども、まだ十分に、その手が加えられていなくて、観光対象になり切っていないという感じを深くするのであります。手を加えるということはどういうことか、これは皆さん方の御意想の存ずるところであって、皆さん方がどのように、この土地を開発していくかという意想いかんによって、変わってくるものであります。

本が始まって、1ページ目に記述している部分ですが、僕の中ではここに全てが詰まっているように思います。この約40年前であれ、現代であれ、どの地方にも(都会にも田舎にも)観光資源は眠っていると思います。それをどういう方向へ持っていくか(編集と発信)ということが問題です。
今僕が住んでいる八女・筑後地域というエリアは福岡県南部に属しており、ものづくりが盛んな地域です。その資源をもう一度、一般の生活者目線でみて、現代で使えるかどうか検証しながら、編集し発信して世の中に問うてみる。というのがうなぎの寝床の一つの役割だと思っています。
これと同じように、他の地域で「農産物」に注目して編集し資源と捉えるやり方もありますし、「環境」に視点をあてる、「文化・風習」に視点をあてる。とそこそこでその資源を見つける視点は違い、その視点の違いが面白い部分なのではないかと思います。

今までは小売店の役割は、物を売る場所をつくる。ということが主だったと思いますが、今からは情報を「蓄積」し「編集」し「発信」し「販売」するということがセットになってくると思います。情報が氾濫している中で、どう一次情報をつかまえて直接使い手、消費者の方に届けられるかというのが、地方における小売店の役割になってくると思います。

交通のインフラが整い、情報のインフラが恐ろしい勢いで発展し、流通のインフラも日本はすばらしい。ここ何十年かで大胆に変化した状況の中で、歴史をもう一度見つめ直してみて、先人の知恵す借り、現代の状況を把握しながら、もう一度、八女・ちくご・九州における「観光」はどうあるべきかなと考えるきっかけになりました。

上の抜粋した部分だけではなく、日本の旅の仕方と世界の旅の仕方の比較があったり、それこそ交通のインフラの変化に伴う、旅の仕方の変化に対する考察があったり「嗚呼、こうやって旅のやり方、観光のやりかたが変わってきたのだな。」と分かる本です。ぜひご覧ください。

宮本常一著作集 18 旅と観光

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